人の痛みがわかるすてきな医師

恵の素晴らしいトーク……そうか。

初志貫徹、よく3年間頑張ったなと声をかけると、いやあ、正直大変でした。
浪人1年目は今考えると必死さに欠けててやっぱりダメで、2年目は予備校を変えました。
かなり頑張って、Y大学の補欠になったんですけど、結局繰り上がりの連絡が来なくて3年目に突入しちゃったんですよ。
最後の1年だと覚悟を決めて悔いだけは残さないようにと思ってやって、今年やっとX大学に合格できました。
明るく話すA男だが、その間の不安や焦りはいかばかりのものであったか。
去年、補欠の連絡が来て、でもダメだったときはほんとに落ち込みました。
何が足りなかったんだろう? どうやったら受かるんだろう?って思いました。
実は、去年の春に母を亡くしたんです。
体調が悪いって入院して1週間で逝ってしまったんです。
ほんとにあっけなくてしばらく呆然(ぼうぜん)としてましたが、一番応援してくれていたのが母でしたから、最後の1年と決めて、がむしゃらにやれたのかもしれません。
様々な困難に直面しつつもそれを乗り越えて合格を勝ち取ったA男。
夢をかなえるためのスタートラインに立ったばかりだが、紆余曲折があったからこそ人の痛みがわかるすてきな医師になってくれることと確信している。
次はいつになるかわからないが、再会の日が楽しみである。